8bro

キャラメルプライベート

冬の句点

黒の小物を買うときは、本気で一生使うつもりで買っている。
バッグや靴、小物なら断然黒が好きで、欲しいのはダークグレーでもチャコールでもダークネイビーでもない宇宙みたいに真っ暗な黒。
赤や青や黄色や緑の目の覚めるような色の服を着て、最後の仕上げに真っ黒な靴を履く。
それは句点に似ている。

それによって自分が纏う空間を完結させている。
ここで終わり。ここまでが僕です。

高校生の頃から服の趣味も髪型もほとんど変わらない。
そのせいか昔の友達に会うと、お前だけ時が止まってるみたいだとよく言われる。
そんなことないよ?
ふと持ち上げた果物の底が驚くほど腐っているように、僕も、ゆっくりとしかし着実に、柔らかく甘く腐っていて、それでも何年も何年も形状だけ同じだなんて、それって何だか薄気味悪いね。

 


【この冬に起こったこと】

大阪の知らない大学から間違い電話がきた。
(僕が何かしたのかと思った)

女の人に「悪い人なんですね」と言われたので「そうですね」と答えた。
(気づくの遅いんじゃない?)

米軍とする手作り餃子パーティーに呼ばれたが、予定が合わなくて行けなかった。
(次は行きたい)

白と青のストライプ柄のコートを着て寄った用具店で、隣に立っていた知らないおじさんが急に「綺麗な青だね。白とのストライプで、まるで飛行機雲の通った夏空みたいだ。この青が見れただけでも、この店に来た甲斐があったよ」と言ってくれた。
(なんて完璧な褒め言葉でしょう)

大きな水槽に入った。
(きれいだった)

待ち合わせ20分前にドタキャンされたけど、死ぬほど可愛い服を2着買って気持ちを落ち着かせたのでギリギリこの星を滅ぼさずに済んだ。
(きみたち命拾いしたな)

深夜に本屋でファイルを探していて、棚からファイルを引き出した拍子に何か床に落ちたなと思ったら小さなドングリだった。
(世界ってズルい)